KIRINJI・堀込「どんどん成長してる」

2016.1.24 12:00

KIRINJI(左から、楠均、弓木英梨乃、田村玄一、堀込高樹、千ヶ崎学、コトリンゴ)

(写真4枚)

『KIRINJI LIVE 2015』(11月25日・梅田クラブクアトロ)

行ったり来たりを繰りかえす、デジャヴとジャメヴは紙一重。

KIRINJI・堀込高樹、梅田クラブクアトロ『KIRINJI LIVE 2015』より(写真/倉科直弘)
KIRINJI・堀込高樹、梅田クラブクアトロ『KIRINJI LIVE 2015』より(写真/倉科直弘)

KIRINJIのライブを観るのはほぼ1年ぶり。前回は神戸で、これが堀込高樹、田村玄一 、楠均、千ヶ崎学 、コトリンゴ、弓木英梨乃の6人編成による新生キリンジの関西での初お目見えのライブだったと記憶している。昨年発売されたアルバム『11』は稀代のヴォーカリスト、堀込泰行の脱退という大きなダメージを、バンド・サウンドへのより大胆なアプローチでポジティヴに変換した名盤で、ライブもその方向性を確信させて余りある内容だった。

そして今回のライブは新しいアルバム『EXTRA 11』を引っさげて・・・ということになるわけだが、このアルバムがとても変わった性質を持っている。収録曲は『11』の中の9曲。ライブ音源をもとに、ヴォーカルは録り直されて、さらにオリジナルとは異なる楽器がオーヴァーダビングされて、それぞれ大きな変貌を遂げている。言わば、生演奏によるリミックスという趣きだ。

梅田クラブクアトロ『KIRINJI LIVE 2015』より(写真/倉科直弘)
梅田クラブクアトロ『KIRINJI LIVE 2015』より(写真/倉科直弘)

今回のライブは、前述の6人に加えて前回のツアーに引き続きパーカッションの矢野博康を加えた7人編成。「黄金の舟」にはじまり、「ゴールデンハーヴェスト」、「自棄っぱちオプティミスト」など“兄弟”時代の曲や新曲「fake it」を、現在のKIRINJIサウンドで畳み掛けてくる。

ここから、アルバム『EXTRA 11』での新しいアレンジに基づいた「fugitive」(ヴォーカルはコトリンゴ)、「狐の嫁入り」、「ONNA DARAKE」と披露される。楠均がプレスリーばりに歌い踊る「ONNA DARAKE」はメジャー・コードになってウエスタン・スウィンング調に変身。田村玄一のスチール・ギターが冴えまくる。

KIRINJI・コトリンゴ(左)と弓木英梨乃、梅田クラブクアトロ『KIRINJI LIVE 2015』より(写真/倉科直弘)
KIRINJI・コトリンゴ(左)と弓木英梨乃、梅田クラブクアトロ『KIRINJI LIVE 2015』より(写真/倉科直弘)

前回のライブでの嬉しいサプライズだったのが弓木英梨乃の歌う「それもきっとしあわせ」だったが、今回はそのかわりに「あの娘のバースデイ」という新曲が披露された。

坂本真綾のカヴァー「うちゅうひこうしのうた」から、15年夏の新曲「真夏のサーガ」と続く。

「雲呑ガール」はアルバム『11』ヴァージョンで、弓木英梨乃がエイドリアン・ブリューばりに弾き倒す。ここから「都市鉱山」までの6曲のパフォーマンスが圧巻だった。言葉を越えた説得力で、海外でも文句なしに高い反応が得られるだろう。

KIRINJIが『EXTRA 11』とこのライブで示してくれたものについてずっと考えている。これは『マッドマックス 怒りのデスロード』における“今来た道を引き返す”行為に通じる、画期的な冒険なのではないだろうか。「進水式」はより力強く、「だれかさんとだれかさんが」はより自由に、しっかり「育って」いた。

取材・文/安田謙一(雑誌『Meets Regional』連載「安田謙一の人間、ライブが資本主義 32」より)

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本