吉永美和子が選ぶ、今年の演劇賞

2015.12.30 08:55

『五右衛門vs轟天』より

(写真3枚)

年末各業界で行われる賞レースやベスト企画に便乗し、演劇ライターが独断と偏見で選ぶ「2015年の演劇賞」を決定! 「演劇マニア以外も楽しめる舞台」を求めて、地域問わず駆けまわる、日本一革ジャンが似あう(と言っている)演劇ライター・吉永美和子さんのセレクトはこれだ!

【吉永美和子談】
今年も小劇場から大劇場まで、いろんな舞台を拝見させていただきました。すべての作・演出家と役者とスタッフの皆さん、本当にありがとう楽しかったよ。その中で「特に一言言わせて下さい!」と思った作品と役者と期待の新星がこちら!

【最優秀作品賞】
劇団☆新感線『五右衛門VS轟天』

ピカレスクな魅力満載の五右衛門と、変態な言動が爆笑必至の轟天の二人三脚が、すさまじい相乗効果となった劇団結成35周年公演。内容が素晴らしいのは当然として、彼らのエンターテインメントへの心意気に改めて感服させられたよね。エネルギー全開のギャグとアクションがノンストップで続いたあげく、ラスト10分でまさかのラスボスぶっ込んで来るとか! ちょっと楽しそうに演じるだけで「元気を与える」とうたう作品が横行する中、本当に観客に元気を与えるには、万人の想像を超えるアイデアと体力を死ぬ気で絞り出してナンボじゃい! という気概が伝わる傑作。彼らが各駅停車になることは当分ないな!

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【最優秀俳優賞】
吉川莉早(ヨーロッパ企画『遊星ブンボーグの接近』)

ヨーロッパ企画『遊星ブンボーグの接近』より
舞台『遊星ブンボーグの接近』より

観光旅行で地球に来た小さな宇宙人たちと、地球人の交流を1つの舞台で見せる。「演劇でできんのそれ?」な世界を、地球人は映像で巨大化するというアイデア一発で実現した作品。これは地球人役・・・特に序盤を支えた吉川莉早の好演がなければ成立しなかったな。舞台の構造上ほぼ一人芝居状態にも関わらず、他の役者たちと巧みに呼吸を合わせた柔軟な演技に加え、映像ドアップで見せる表情一つ一つが本当にキュートで癒された。来年もいろんな舞台で俺たちを癒やしてくれ!

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【最優秀新人賞】
THE ROB CARLTON『エルダー・ステイツマンズ・ガーデン』

THE ROB CARLTON『エルダー・ステイツマンズ・ガーデン』より
舞台『エルダー・ステイツマンズ・ガーデン』より

演劇の場合、旗揚げ公演は身内しか観てないとかザラなので、「結成5年以内」を新人枠にしますねと前置きした上で…。今年初大阪公演を実現した、京都のエンターテインメント集団THE ROB CARLTONが文句なく1等賞だな。セレブな世界の中で交わされるおかしな会話とバタくさい演技。「それは解決になってるのか?」と思いつつもハッピーエンド気分にさせられる展開と、すでに揺るぎないスタイルが出来上がっているのが頼もしい。今後の観劇計画にぜひ加えよう!

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