週末行きたい、大御所・大物のアート

2015.12.24 19:17

ダ・ヴィンチ アンドロイド(部分) 写真/小林信司

(写真4枚)

「とにかく誰よりも現場を見て歩く」を信条に、美術ライター・小吹隆文が膨大なアートの海から、いま必見の展覧会をピックアップ! 今週は大物、大御所のアートで納得。

「万能の天才」の凄さを実感しよう

『ダ・ヴィンチ!天才の遺産 レオナルドと歩む未来展』@ナレッジキャピタル

「モナ・リザ」や「最後の晩餐」などで知られる芸術家であり、天文学、航空力学、解剖学などあらゆる分野で活躍したレオナルド・ダ・ヴィンチ。彼の科学者・技術者としての側面を紹介するのが本展だ。

展覧会は、「過去」「現在」「未来」の3ゾーンで構成。「過去」では、レオナルドの手稿(観察やアイデアのメモとスケッチ)のファクシミリ版35点と、手稿を元に製作した「自走車」(現代の自動車に繋がる)や「空圧ねじ」(ヘリコプターの原型)などの木工模型を展示。「現代」では、現代の乗り物とレオナルドの関係を紹介し、「未来」では、大阪大学大学院教授の浅田稔氏が製作したレオナルドのアンドロイドと、現代のロボットを披露する。

12月23日(水)〜2016年2月14日(日)

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大スケールの作品が放つ圧倒的な存在感

『山を出てー王懐慶展』@兵庫県立美術館ギャラリー棟3F

中国人アーティスト王懐慶の日本初の回顧展が兵庫県立美術館で開催されている。約30点の作品は主に2000年代のものだ。中でも圧巻は展示室中央に鎮座する大作「山を出て」。

展示風景 Courtesy of the Artist and Tina Keng Gallery
展示風景 Courtesy of the Artist and Tina Keng Gallery

6つの黒い平面は山を表し、その間に作家が自ら伐採した木が水流のごとく配されて、床に並ぶ複数の鏡へと続いていく。本作は明らかに山水画の構図に倣っており、中国書画の伝統と現代性の融合という彼の作品に共通するテーマが明確に見て取れる。ほかには、「大音無声」、「大音有声」など一辺が5メートル以上の大作や、最新シリーズ「秘密の本」10点など多彩な作品が見られ、彼の芸術世界にたっぷり浸ることができる。また、建築家の豊田啓介による凝った会場構成も要注目だ。

12月4日(金)〜2016年1月11日(祝・月)

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実業家と芸術運動の濃密な関係を再評価

『山本爲三郎没後50年 三國荘展』@アサヒビール大山崎山荘美術館

アサヒビール初代社長・山本爲三郎の没後50年を記念して、彼が民藝運動をあつく支援した証でもある「三國荘」を再考する。手仕事の日用品や雑器に「用の美」を見出した民藝運動。その創始者である柳宗悦らは、1928年の御大礼記念国産振興東京博覧会にパビリオン「民藝館」を出品し、その思想を住空間として表現した。

三國荘 応接室
三國荘 応接室

同館は博覧会終了後に山本が買い取り、大阪・三国の自邸に移築して「三國荘」と呼ばれることに。本展では、アサヒビール大山崎山荘美術館が所蔵する三國荘ゆかりの陶磁器・調度品などを一挙に公開するほか、三國荘の応接室と主人室を再現している。近年注目が高まる三國荘の全貌に迫り、その歴史的・美的価値を改めて考えるよい機会だ。

12月22日(火)〜2016年3月13日(日)

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日本のマンガを源流をたどる野心的企画

『江戸からたどる大マンガ史展 鳥羽絵 ポンチ 漫画』 @京都国際マンガミュージアム

印刷文化が発展した江戸中期の戯画から昭和初期の漫画雑誌まで、日本のマンガがどのような足跡をたどり、発展したかを貴重なコレクションで紹介している。展示は時代順に展開。

浮世ハ夢だ夢だ 作者不詳 慶応期(1865〜68) 所蔵/京都国際マンガミュージアム
浮世ハ夢だ夢だ 作者不詳 慶応期(1865〜68) 所蔵/京都国際マンガミュージアム

江戸時代は、鳥羽絵本などの戯画に始まり、歌川国芳の風刺画、歌川広景の「江戸名所道化尽」、河鍋暁斎の「暁斎百図」などの資料が並ぶ。明治時代は、最後の戯画錦絵から西欧の影響を受けたポンチ絵への変遷、雑誌や漫画本のブームが、昭和初期から戦中にかけては、漫画雑誌、ナンセンス漫画が取り上げられている。総計約300点もの資料で構成されており、質・量ともに充実した展覧会だ。前後期で作品の入れ替えあり。まもなく前期が終了するので、未見の人は急いで会場へ。

前期:11月14日(土)〜12月27日(日) 後期:2016年1月4日(月)〜2月7日(日)

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文/小吹隆文

 

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