維新派「トワイライト」最新レポート

2015.9.20 17:29

『トワイライト』より

(写真3枚)

関西を代表する野外劇集団・維新派。9月19日から始まった彼らの新作『トワイライト』は、奈良県・曽爾村の山中にある運動場の広さと、宙に浮かんでるような地形を生かした、まさに黄昏に見る幻のような世界となっていた。

本作のメインテーマは「地図」。維新派名物のラップ調のセリフ回しや、機械的な振付を通じて、様々な地図を観客に想像させる。役者たちの立ち位置によって日本地図を描き出したり、世界各地から「今何をしているか」の報告を通じて世界地図を思い浮かべたり。あるいは身体の部位の名前を並べることで、人体もある種の地図であると気づかされたりも。

そして野外だからこその演出の数々も際立つ。舞台美術らしき物がほとんどない大きな空間を、人が均等に並んだり、逆に一人ポツンとたたずむだけでも、不思議な美しさが生まれる。また照明が一斉に消えると、山の上に広がる星空に目を向けさせる仕掛けも。これこそ劇場ではもちろん、人工の光が過剰にあふれる都市の屋外でも不可能なシーンだろう。

一方、内容は少し切ない作品。子どもならではの無邪気な残酷さ、様々な「地図」を失った大人たちのよるべなき姿など、自分の思い出や現状と重ねて、ふと胸の痛みを感じたりも。多様な解釈ができる謎めいたラストシーンは、その切なさを経たからこそ胸に染みる光景に映った気がした。

劇場隣には屋台村も
劇場隣には屋台村も

また、劇場の隣にはおなじみとなった屋台村が、何と二階建て構造で登場。上演前後には、毎回大人気のモンゴルパンや、劇団員もファンだという曽爾村の飲食店のうどんなどを食べながら、日替わりミュージシャンのライブも楽しめる(スケジュールはこちら)。また足が確保できるなら、公演ビジュアルの撮影地・曽爾高原に行くのもおすすめ。山の中にぽっかり現れるススキ野原は、維新派の舞台同様に心に大きく響くはずだ。

取材・文・写真/吉永美和子

『トワイライト』

日程:2015年9月19日(土)~27日(日)
会場:曽爾村健民運動場(奈良県宇陀郡曽爾村大字今井862)

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