静かなる緊張、神戸で舟越桂の彫刻展

2015.7.7 11:13

手前:《山を包む私》 2000年 個人蔵 奥右:DR0003《「山を包む私」のためのドローイング》 2000年 個人蔵 奥左:《「山を立てる」のためのドローイング》 2001年 作家蔵

(写真2枚)

現代日本を代表する彫刻家、舟越桂。彼の1980年代から現在までを俯瞰できる個展が「兵庫県立美術館」(神戸市中央区)にて開催中。最新作を含む木彫作品30点と、素描、版画など約40点が見られます。

展覧会は3つの章で構成されています。第1章は1980年から1990年代初めに制作された半身像。半身像であること、大理石の玉眼を持つこと、彩色されていること・・・といった、舟越作品に特徴的なスタイルが確立されたのはこの頃です。その静謐なたたずまいは、発表から30年前後を経た今見ても十分に新鮮です。

第2章は1990年から2000年代初めの作品。第1章と同じ半身像ですが、山を思わせる胴体や、双頭の人物像、具象表現からはみ出た腕の付き方など、表現に明らかな変化が見て取れます。周囲の環境を含めたより大きな世界を、人物を通して表現しているかのようです。

手前:《バッタを食べる森のスフィンクス》 2008年 個人蔵 奥:《もうひとりのスフィンクス》 2010年 個人蔵
手前:《バッタを食べる森のスフィンクス》 2008年 個人蔵 奥:《もうひとりのスフィンクス》 2010年 個人蔵

第3章は2000年から現在の作品で、半人半獣・雌雄両性の特徴を持つ異形の存在「スフィンクス」を中心とした作品が並んでいます。異形とは何か、スフィンクスとは何か。それは人間誰しもが抱えているが、外見には現れないもうひとつの側面(ダークサイド?)を示しており、第1章の作品と見比べた時、作家の表現がどれだけ深化したかが窺えます。

このように時系列で作品を見ながら、一作家の変遷をたどれるのが本展の魅力です。また、木彫作品と共に展示されている素描やスケッチブックを見ると、舟越さんがどれほどドローイングを大切にしているかが分かります。静けさの中にも心地よい緊張感と興奮を孕んだ、見応えのある展覧会です。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

『舟越桂 私の中のスフィンクス』

期間:2015年6月27日(土)〜8月30日(日)
時間:10:00~18:00(金土曜~20:00) ※入場は閉館30分前まで ※月曜休(7/20開館、7/21休館)
会場:兵庫県立美術館(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1)
料金:一般1,300円、大学生900円、高校生・65歳以上650円、中学生以下無料
電話:078-262-0901

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